セールスイネーブルメント導入を進めている企業が多いでしょう。
営業のマネージャーのみなさんは営業メンバーに対して
日々の活動に対しての営業コーチングを行っているでしょう。
コーチングの具体的な内容としては
案件進捗や商談に対するコーチングなど様々でしょう。
更に具体的なコーチングの詳細については以下のコラムを参考にしてください。
営業コーチングの必要性
では自社のコーチングはどれくらいうまくいっているのでしょうか?
他社と比べて進んでいるのかそれとも改善の余地があるのか。
今回はコーチングの成熟度の考え方や成熟度を進化させる方法についてお伝えしていきます。
(「Sales Enablement」著:Byron Matthews を参考にしております)
営業コーチングとは?
一般的にコーチングとは、相手に質問をすることで気づきを得て、内省を促して成長を促すような手法です。営業コーチングも同様です。
そもそも営業コーチングとは、営業チームのメンバーが自ら考え、気付きを得て目標を達成できるように、双方でコミュニケーションを行う手法です。
上司から部下への一方的なコミュニケーションである「指導」や「教育」とは異なり、対話をしながら自発的に答えを導き出せるようサポートすることが「コーチング」の役割です。
そのため、営業コーチングでも部下に対して営業活動に関して自省を促す質問を的確に投げかけるスキルが求められます。
営業コーチングのメリットと注意点
営業コーチングのメリット
営業コーチングは、受けるメンバーだけでなく、実践する営業マネージャーや営業組織全体にもさまざまなメリットがあります。
(営業メンバーのメリット)
解決策の導き方や思考力、表現力が身に付く
上司から承認されることでモチベーション向上につながる
(営業メンバー、マネージャー)
上司と部下との信頼関係を構築できる
(営業組織)
チーム内の人間関係がスムーズになる
自発的に動ける営業担当を育成することで、チーム全体の営業力が向上する
前向きに取組むことでチームの士気が高まる
コーチングを受ける部下は、上司との会話を通じて営業活動における問題解決への導き方、表現力を身に付けられるため、営業力の向上が期待できます。
また、コーチングするなかで上司や部下、営業チーム間で信頼関係を構築できれば、コミュニケーションがスムーズになります。
部下のモチベーション向上を図り、新たな気付きや改善を促すためにも、営業コーチングが効果的といえるでしょう。
営業コーチングの注意点
コーチングには多数のメリットがありますが、実践するにあたって注意点もあります。
・知識や経験が少ない段階では十分な効果を得にくい
・部下が不満を感じる可能性がある
入社したばかりでは、自主性や思考力を育てる以前に、基礎的な知識や経験が不足しています。そのため、初期段階でコーチングを実践しても、十分な効果を得られない可能性があります。
また、営業コーチングは、知識・ノウハウ・解決策をそのまま教えることが目的ではありません。自主性を重んじ、部下自身に任せ過ぎると「何も教えてくれない」という感情を抱かせるケースもあるでしょう。
指導に対する不満や、信頼関係の悪化につながるリスクもあるため、取組み方には注意が必要です。
まだ知識や経験が乏しい部下には、コーチングよりもティーチングが役立つこともあります。部下の性格や抱えている問題、指導のタイミングをしっかり見極めたうえで、育成方法を上手に使い分けることが望ましいでしょう。
営業コーチングの成熟度について
(「Sales Enablement」著:Byron Matthew」によると
コーチングは以下の成熟度に分類されます。
1.ランダム
コーチングの方法(行うべきか、いつ行うのか)は完全に属人化されており、
営業マネージャー次第になっている状態
2.インフォーマル
コーチングの方法については一応チーム内で方針は決まっているが
見直しされる訳でもなく責任(強制)も存在しない状態
3.フォーマル
コーチングをおこなうためのトレーニングや責任の所在が明らかで
整備されたコーチングプロセスがある状態
4.ダイナミック
3のフォーマルなアプローチをセールスイネーブルメント全体の
フレームワーク(セールストレーニング、コンテンツ、顧客の状態)と整合させている状態
例えば、
見込み客が情報収集段階(顧客の状態)において、
・コンテンツ:事例集
・トレーニング:スキルトレーニング(興味喚起をして購買につなげる説明をするトレーニング)
・コーチング:リードの見極めを指導する
のように他のセールスイネーブルメントの取り組みとの整合性がとれている状態
MILLER HEIMAN GROUPの調査によると
2017年時点では、営業コーチングの成熟度について
ランダムの状態(マネージャー次第のコーチング)や
インフォーマルな状態(方針のみが決まっている)が70%となっており、
まだまだ営業トレーングは成熟していません。
外部の研修で得たツールやセールスマネージャーが独自に作成した
コーチングツールがある可能性もあるので、まずは社内で棚卸してみるとよいでしょう。
営業コーチングの準備
どんな内容の営業コーチングが必要なのか営業メンバーに質問してみることも必要です。フィードバックの収集とデータの分析が重要です。
例えば、
「あなたのポテンシャルを最大限に引き出すために、マネージャーはどんなことをしてくれますか?」
「どうすればマネージャーはもっと上手くコーチングできると思いますか?」
などがよいでしょう。
あるいは、どの営業マネージャーが目標達成しているかを調べてどこで差が生じているのか、営業プロセスを分解して営業コーチングの方法を分析する必要があります。
例えば、見込み客に対しての商談の見極めはできているのか、案件進捗に対してクロージングの精度を高める適切な提案はできているのか、など営業コーチングの内容と精度を確認することが必要です。
営業コーチングの実行
①現状の分析(問いかけで自己分析を促す)
営業メンバーがどのような点に悩みを抱えているのか、現状について問いかけたり、普段の営業同行や営業ミーティングでの発言内容から整理していきます。この際、高圧的な態度を取ることなく、相手が自由に発言できる環境をつくる必要があります。
「自分の話を聞いてもらっている」と部下に安心感を与えられれば、自発的な思考を促すことができます。自らの言葉で営業活動で良かった点、改善点を発言してもらいましょう。
②目標・ゴールを具体化させる
①で整理して現状を踏まえ、具体的なゴールや目標を具体化します。さらに、どうすれば目標まで到達できるのか、ゴールまでのプロセスも明確にします。
この際、最終的なゴールだけでなく、ゴールに至るまでに必要な行動や不安要素、ゴールすることで得られる効果などを質問から引き出して、具体化するのがポイントです。
ここでも営業メンバーが自ら具体的なゴールを決めていくのが重要です。そうすることで納得感が強まり実行もスムーズになります。ただ本人による決定が難しければティーチングの要素も入れて、営業マネージャーが具体案を提案していくことも必要です。
③ゴール達成に向けた営業活動を明確化する
どのようなステップでゴール達成を目指していくのか、具体的なアクションプランを設定します。上司が一方的にプランを提示するのではなく、メンバー自身に考えさせることが重要です。部下の考えやアイデアを認めつつ、ここでも改善点を提案しましょう
具体的な行動が明確になることで、部下のやる気が高まり、行動に移しやすくなります。
また、ゴールまでのプロセスでは、行動を振り返るタイミングを設けることもポイントです。プロセスごとに部下の行動を評価しながら、前向きに取り組めるようサポートしましょう。
組織としての営業コーチングの磨き方
現場からのフィードバックやデータ分析で自社にあった営業コーチングの内容が見えてきました。早速実行してみましょう。運用が落ち着いてからも、定期的に内容を磨いていかなないとすぐに陳腐化してしまうので注意しましょう。
例えば、自社で行いたい営業コーチングをする上で必要なデータはあるのか、データはあるのにそれを活用したコーチングはされているのか、など日々管理して行きましょう。
もしデータに対して営業マネージャーでもアクセスできないような情報がある場合は社内で調整し、新しいツール(ダッシュボード機能)も用意した方がよいでしょう。
このように理想とする営業コーチングを実現するためには、現状とのギャップを分析して、足りない要素があった時に柔軟に対応していく姿勢が必要になります。
まとめ
営業コーチングの成熟度と成熟度を上げていく方法について整理してきました。
・営業コーチングとは
営業チームのメンバーが自ら考え、気付きを得て目標を達成できるように、営業マネージャーと営業メンバー間でコミュニケーションを行う手法
・営業コーチングのメリット
(営業メンバーのメリット)
解決策の導き方や思考力、表現力が身に付く
上司から承認されることでモチベーション向上につながる
(営業メンバー、マネージャー)
上司と部下との信頼関係を構築できる
(営業組織)
チーム内の人間関係がスムーズになる
自発的に動ける営業担当を育成することで、チーム全体の営業力が向上する
前向きに取組むことでチームの士気が高まる
・営業コーチングの成熟度
1.ランダム
コーチングの方法(行うべきか、いつ行うのか)については完全に属人化されており、営業マネージャー次第になっている状態
2.インフォーマル
コーチングの方法については一応方針は決まっているが見直しがされる訳でもなく責任も存在しない状態
3.フォーマル
コーチングをおこなうためのトレーニングや責任の所在が明らかで整備されたプロセスがある状態
4.ダイナミック
3のフォーマルなアプローチをセールスイネーブルメント全体のフレームワーク(セールストレーニング、コンテンツ、顧客の状態)と整合させている状態
・営業コーチングの進化の方法
①営業メンバーからのフィードバックとデータの収集
どんな内容のコーチングが必要なのかをセールスに質問する
営業マネージャーの目標達成度合いとコーチングの詳細を洗い出す
②資産評価とギャップの優先付け
:フィードバックやデータの収集で得た情報を基にネクストアクションを実行
:定期的な振り返りによる定期的な改善
営業マネージャーはこの他にも採用、自社のビジネス分析、顧客理解など幅広く総合的な能力が必要になります。
多くの企業では、営業マネージャーへのトレーニングの投資は後回しにされることも多いですが、実は投資した組織の方が売上目標達成率、成約率は高いという統計もあります。(CSOインサイト 2017年のセールスイネーブルメント最適化調査より)
営業メンバーだけでなく営業マネージャーへのトレーニングも一度整理してみるのもよいでしょう。営業コーチングへの投資も疎かにしてはいけません。
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