現状維持バイアスとは、現在おかれた状況からの変化を嫌い、
現状を維持したくなってしまう心理現象のことです。
実は営業時にもこれを使い分けることでLTV(顧客生涯価値)の向上に
役立てることができるのです。
新規と既存で異なる現状維持バイアス
ではこの現状維持バイアスは営業活動においてどのように作用するでしょうか?
例えば新規営業はどうでしょうか?
新たにサービスを導入する場合は、同じ分野のサービスを提供する
競合企業とのコンペになることが多いでしょう。
しかし競合だけでなく、自社だけのリソースでなんとなくしようとする
「内製」も大きな脅威になるのでないでしょうか?
このような場合に見込み客の心理で作用するのが「現状維持バイアス」です。
そうなると「現状維持バイアス」を打開する必要がありますね?
では、既存顧客への契約継続の提案はどうでしょうか?
他社サービスに切り替える可能性も高く、
顧客内では現状維持か新しいサービスを導入するのかで悩んでいるかもしれません。
この場合は「現状維持バイアス」を維持する提案をする必要があります。
ではそれぞれどのように提案をしていけば良いでしょうか?
新規営業では現状維持バイアスを打開する
新規営業での提案では、顧客にとっては今まで試したことがないサービスを
導入するので現状維持バイアスを打開しなければなりません。
では、どのような説得していけば良いでしょうか?
(以下、「ストットセールス」より一部引用)
1.相手が好ましく感じている現状をゆさぶる
→見落とされているニーズを伝える
なぜ現状維持したいのか質問をして深堀することで
見落とされていたニーズに気付いてもらいましょう。
2.現状維持にもコストがかかると示す
→今のやり方には限界があることを明らかにする
現状を維持した場合に起こりうるトラブルの可能性や
現状での非効率な側面を訴求すると良いでしょう。
3.いまのやり方とは対照的な選択肢を紹介する
→改良された新しい方法と比較する
現状維持とは対照的に新しいサービスを導入した場合の
価値を伝えてみましょう。対比することで現状維持のリスクと
新しいサービス導入の価値が明らかになります。
4.導入前後でどう変わるか、成功例を紹介する
→提案先と似た成功事例を伝えて自分事に捉えてもらう
自社と似た状況にある他社がどのように変わっていったのか
を伝えることで意識が変わっていくかもしれません。
新しく取引をはじめたい企業には上記のようなアプローチを試してみてください。
既存顧客では現状維持バイアスを維持。場合によっては打開
既に自社と契約している顧客に対しては、現状維持バイアスを強化していきましょう。
そもそも現状維持バイアスを生み出す要因には以下の4点があります。
それぞれ強化していきましょう。
1.安定を優先する傾向
→サービス導入時の選考のプロセスを振り返る
選定軸を整理することで、決定は正しく不満もないままの状態であると納得してもらいましょう。
2.変化に伴うコストへの懸念
→導入時の初期コストと業務の改善によるコストの回収を説明する
そうすることで新しくサービスを導入した場合のコストを、
より高くなると印象付けることができるでしょう。
3.選択の難しさ
→サービスの数が多すぎて選定が複雑なこと、契約中でのサービス内容の更新を伝える
他社サービスに乗り換えたしても、享受できる価値が
そんなに変わらないと感じてもらえるでしょう。
4.後悔や非難への恐れ
→サービスを導入後の社内の体制・プロセス変更のための時間とリソースを振り返る
新しいサービスを契約した場合、同じような手間が発生すると考えると
現状維持に留まるのでないでしょうか?
基本的には既存顧客へは上記のように現状維持バイアスを高めることで
既存顧客の契約維持につなげることができるでしょう。
しかし、一方でアップセルや他サービスを提案する場合は
新規営業のような提案(現状維持バイアスの打開)が必要になるので
顧客の状況によって使い分けられると良いでしょう。
まとめ
今回は「現状維持バイアス」の営業での活用方法を紹介してきました。
■新規営業の場合
・現状維持バイアスを打開する
1.相手が好ましく感じている現状をゆさぶる
→見落とされているニーズを伝える
2.現状維持にもコストがかかると示す
→今のやり方には限界があることを明らかにする
3.いまのやり方とは対照的な選択肢を紹介する
→改良された新しい方法と比較する
4.導入前後でどう変わるか、成功例を紹介する
→導入前後の話もまじえた成功事例を伝える
■既存客への提案の場合
・現状維持バイアスを強化する
1.安定を優先する傾向を強化する
→サービス導入時の選考のプロセスを振り返ることで
決定は正しく不満もないままの状態を維持
2.変化に伴うコストへの懸念を強化する
→現状の契約分のコストは回収したが新しいサービスを導入する場合はコストが発生する
3.選択の難しさを伝える
→選定が難しく他社サービスに乗り換えたしても、享受できる価値が
そんなに変わらないことを伝える
4.後悔や非難のリスクを伝える
→サービスを導入した際の社内調整など諸々の業務を振り返り
新しいサービスを契約した場合の同様の手間を伝える
・アップセルやクロスセル狙いの際は現状維持バイアスを打開する
ぜひ新規営業や契約更新時に活用してみてください。
関連コラム:
営業で使える心理学とは?
サブスクリプションモデルって?|LTV志向の営業へ
新規?既存?忘れがちな顧客生涯価値(LTV)向上という視点
スリーシーズ関連サービス:セールスイネーブルメント