SaaSビジネスの解約率(チャーンレート)の原因特定をCSにだけ求めてはいけない理由

解約率の原因特定をカスタマーサクセスにだけ求めてはいけない理由

SaaSのようなサブスクリプションビジネスが普及しています。

このビジネスモデルは月額課金のサービスなので、
いわゆる「ストック型」のビジネスと言えます。

一度契約してしまえば売上がどんどん増えていくので
解約されないようにしっかりとサポートしていく必要があります。

そこで大きな役割を果たすのが、「カスタマーサクセス」です。

もし解約が起こってしまった際にはカスタマーサクセスが
原因を特定してサービス改善などの予防策を考えますが
実はカスタマーサクセスだけで完結しない方が良いのです。

今回はカスタマーサクセスの役割の整理やチャーンが生じた場合の
適切な原因特定方法について紹介していきます。

チャーンレート(解約率)の重要性

なぜSaaSビジネスにおいてチャーンレート(解約率)が重要視されるのでしょうか。

SaaSでは収益のほとんどがサービス開始後から増えていきます。毎月のサービス利用料金が収益になるため、いかにユーザーに長くサービスを利用してもらえるか、いわゆる顧客生涯顧客価(LTV)の最大化が重要になってきます。

また、いくら新規契約を増やしてもその月に解約するユーザーの数の方が多ければ会社としては赤字になってしまいます。サービスが市場に浸透しているかもチャーンレートを計測するのがわかりやすいでしょう。

つまり継続的な収益の確保やサービスの品質向上のためにチャーンレート(解約率)改善が事業の成長に必須であるということです。だからカスタマーサクセスがとても重要になります。

カスタマーサクセスの役割

サブスクリプションモデルの収益のほとんどが
関係が始まった後から増えていきます。

その為、営業が受注してきた後のカスタマーサクセスの
役割が大きくなってきています。

キャッシュポイントに直面する機会が一番多い職種と言ってもよいかもしれません。

少し前まではカスタマーサポートしか存在しませんでした。
サブスクリプションビジネスの浸透に伴いカスタマーサクセスが主流になってきています、

あらためてカスタマーサポートとカスタマーサクセスの違いを紹介します。

■カスタマーサポート
求めるもの:顧客満足度
態度:リアクティブ
利用データ:顧客の声(問合せ、アンケート)
責任範囲:顧客の悪い体験の改善
サービス:プロダクト販売後のアフターケア
業務:サポート
位置づけ:コストセンター

■カスタマーサクセス
求めるもの:顧客の成功
態度:リアクティブとプロアクティブの両方
利用データ:顧客の声と利用状況のデータ、調査
責任範囲:顧客の悪い体験の改善と良い体験の提供
サービス:プロダクトの性能を引き出すサービス
業務:サポート、顧客の学習の促進、拡大、アップセル
位置づけ:プロフィットセンター

上記のように受動的に対応するのでなく、
利用率やユーザー個々の課題を発見して能動的に
アプローチするのがカスタマーサクセスです。

SaaSで解約(チャーン)が生じる理由

とはいうものの一度契約してしまえば全ての顧客が一生
サービスを使ってくれるものでもありません。

「サービスに慣れずに結局使いこなせなかった」
「思っていたサービスと違っていた」
「費用対効果を見出すことができなかった」
「運用担当者が退職してしまった」
「競合のサービスに乗り換える」

いくらカスタマーサクセスが組織化されていても
解約(チャーン)は起こってしまうのです。

カスタマーサクセスではアップセルやクロスセルの売上の他に
この解約率(チャーンレート)やDAU(日次のサービス利用率)を
KPIに置く企業も多いです。

解約が生じた場合は解約理由を特定してその後の予防策を講じる必要があります。
しかし、解約の傾向や根本的な要因を探る時にカスタマーサクセスだけで
考えない方がよいのです。

解約(チャーン)理由の深堀で見えること

解約の原因から対応策を考えてみます。

「サービスに慣れずに結局使いこなせなかった」
これはどちらとも取れますが、カスタマーサクセスのサポートで改善できることもあるでしょう。序盤での躓きは解約を誘発するので、受注後は迅速にカスタマーサクセスに引き継ぐ体制が必須です。

「思っていたサービスと違っていた」
こちらはカスタマーサクセスが原因ではないでしょう。営業時点で顧客との期待調整がされていなかったことが大きな問題でしょう。

「費用対効果を見出すことができなかった」
カスタマーサクセスでサポートしたいところです。達成したいゴール(顧客のサクセス)を最初に決め、それに沿ったスケジュール通りに進めることが重要です。

「運用担当者が退職してしまった」
顧客の社内事情まではコントロールが難しいのでこちらはどうしようもないかもしれません。

「競合のサービスに乗り換える」
こちらはカスタマーサクセスが原因ではないでしょうか?ユーザーのログイン状況等から徴候をつかめるといいですね。

このようにカスタマーサクセスで解約を止めることができないケースもいくつか存在します。

チーム間連携とデータ統合による原因特定

カスタマーサクセスがサポートを開始した時から
以下のような問題に直面して解約につながってしまうケースもあります。

実はサービスやプランが顧客のビジネスモデルに合っていなかった、
そもそもフィールドセールスにパスして良い案件でなかった、
潜在客に向けたメッセージがサービスの本質よずれていた、

分業化が進んでいる企業ではこのようなことも実は多いかもしれません。

ではどのようにすればこのような問題を減らすことができるのでしょうか?

ここで必要になってくるのがデータ連携とチーム間の連携です。
マーケティングではMA(マーケティングオートメーションツール)を使って、
リード獲得やリードナーチャリングを行います。
そして送ったメルマガやキャンペーンに反応して見込み客からの問い合わせを受けます。

この時、どのようなメッセージに対して、どんな資料をダウンロードしたか、
などの情報をマーケティングからカスタマーサクセスまでが共有できれば
問題は減るのでないでしょうか。

マーケティング以降はSFA/CRMによって顧客情報を管理していくのが一般的です。
例えば、営業課題や決済ルートや競業情報などのヒアリングした情報です。

  • MAとSFA/CRMで得られた情報を統合して、
    ・IT業界
    ・営業部長
    ・営業スタイルは新規営業
    ・営業の属人化に悩む
    ・営業力強化に関するホワイトペーパーをダウンロード
    ・受注までのリードタイムは30日
    ・解約率2%

などを可視化して、様々な属性の顧客の受注率や解約率をレポートで
分析していくことで自社に適したターゲットが明確になります。

マーケティング:よりターゲットに向けたコンテンツを作成
インサイドセール:解約率が高い見込み客の優先度を下げる
フィールドセールス:ターゲットにフォーカスして必要以上に案件化させない

このように一気通貫で見ていくことで解約率も結果的に減少していくでしょう。
カスタマーサクセスだけで解約の原因を考えるより有効です。

まとめ

サブスクリプションビジネスの普及によって益々重要になってくる
カスタマーサクセスですがデータの活用や他部門との連携が非常に大切です。

それぞれのチームで扱う情報(MA、SFA/CRM)を統合して

マーケティング:よりターゲットに向けたコンテンツを作成
インサイドセール:解約率が高い見込み客の優先度を下げる
フィールドセールス:ターゲットにフォーカスして必要以上に案件化させない

を意識して解約率の維持や事業の効率化に活かしていきましょう。