コスト削減から価値創出のためのDX|鍵はセレンディピティ?

コスト削減から価値創出のためのDX|鍵はセレンディピティ?

本記事でも何度か紹介してきたDX(デジタルトランスフォーメーション)。
DXを推進することで管理コストの削減や売上の拡大など
様々なメリットを享受することができます。

今回はDXに関わるツールの紹介というよりは
DXの実態の整理や価値創出に関わる概念を紹介していきます。

そもそもDXとは

そそもデジタルトランスフォーメーション(DX)とは、
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と、経済産業省の『DX推進ガイドライン』で定義されています。

一般社団法人日本能率協会の2020年度調査では大手では8割以上、全体では5割以上の企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)に着手しているという報告がありました。

引用:https://www.atpress.ne.jp/news/227512

実態をもう少し見ていきましょう。

DXの取り組みの実態

『日本企業の経営課題2020』調査結果【第2弾】によると、DXの取り組みを既に始めている、もしくは検討を進めていると回答した企業(305社・全体の57.3%)に対して、DX推進の目的として重視していることを尋ねたところ、「デジタル技術の活用による業務プロセスの効率化・生産性向上」を「非常に重視している」が34.8%、「重視している」が46.9%と、合わせて8割超(81.7%)となり、最も重視度が高い項目として挙げられました。

また、「デジタル技術の活用による既存の商品・サービス・事業の付加価値向上」についても、「非常に重視している」が25.2%、「重視している」が47.5%となり、7割超(72.7%)の企業が重視しているという結果が見られました。

一方で、「デジタル技術を活用した新規事業の開発」、「デジタル技術の活用による新規顧客の開拓」、「顧客や社会のデジタル化に対応した抜本的な事業構造の変革」については、「非常に重視している」(21.0%)「重視している」(36.7%)の合計が6割弱で、「やや重視している」の比率が多めになっており、上記の2項目に比べて重視度がやや低めであることがうかがえます。

新たな企業成長に向けたDXの推進という観点では、さらなる検討の余地があるものと思われます。

コロナ禍でDXを推進する企業が増えました。
例えば、
・OCR製品を用いた紙書類の電子化
・クラウドストレージを用いたペーパーレス化
・SFAやWeb会議を用いた営業活動のデジタル化
・RPAを用いた定型業務の自動化
・社内チャットの導入によるコミュニケーションの効率化
などを進めたと思います。

統計結果と同様に、ここに書いてあるのは
業務効率化にあたる部分が多く、抜本的な事業構造の変革までには至らないでしょう。
いわゆる「価値創造のためのDX」を進めるにはどうすれば良いでしょうか?

テレワークで顕在化した課題と価値創造DXの鍵

テレワークによってDXが進み、自宅でも変わらない業務ができるように
なった方は多いかもしれません。一方で課題もあります。

月刊総務の調査によると、
テレワークによる気軽なコミュニケーションの取りやすさに変化があるかと尋ねたところ、
「取りにくくなった」と回答した割合は72.3%でした。つまり、日常的なコミュニケーションが
取りにくくなったことで、モチベーションへも影響を及ぼしている可能性があるともいえます。

調査で従業員へ会社の方向性を伝えにくくなったと回答した企業に対し、
伝えにくくなったことで社員のエンゲージメントに変化はあるか尋ねたところ、
「とても低下している」「やや低下している」が合わせて95.7%と、
ほとんどの企業が社員のエンゲージメント低下を感じていることがわかりました。

これが最大の課題ではないでしょうか。リモート環境により、会社とのつながりが低下し、その結果、方向性が伝えにくくなり、エンゲージメントが低下していく。

確かに、テレワークにより、目の前の仕事の生産性は高まることはあるかもしれません。しかし中長期的に見た場合、エンゲージメントの低下は、生産性の低下につながるでしょう。

生産性の向上を、「効率性の向上」と「創造性の向上」に分解した場合、エンゲージメントの低下は、特に創造性の向上へ悪影響を及ぼしそうです。

DXの目的である「自社ビジネスの変革のためには、創造性を発揮しやすいような環境が必要になってきます。

リモートで効率性は向上したとしても、人と人とのつながり、人と組織とのつながり、そしてそのつながりをベースとした協働意欲、エンゲージメントの向上も満たさなければDXの成果は出ないかもしれません。

セレンディピティが求められる

上記のようにDXを推進していくとネガティブな側面に
直面することもあるでしょう。創造性を育むには「セレンディピティ」が求められてきます。

 

セレンディピティとは
求められていない、意図的でない、思いもよらない、幸運な偶発的に起こった出来事や経験。
18世紀の英国人作家ホレス・ウォルポールがスリランカの童話『セレンディップの3人の王子たち』をもとに作った造語とされる。

普段の雑談から思いもよらないアイデアが生まれることを経験した方は多いのではないでしょうか?

このように創造性の向上のDXのためにセレンディピティという
概念を念頭におくと良い方法が思いつくかもしれません。
意図的に雑談のチャットをする、チームを跨いだzoom等での
コミュニケーションの場を設ける、などです。

まとめ

今回はDXの実態や価値創出に関わる概念を紹介してきました。
テレワークが推進されて業務効率化が進みましたが、
価値創造の力は弱まっているかもしれません。

DXによって価値創造までつなげられるよう社内体制を整えていきましょう。
セレンディピティが起こる環境を意識的に作ることも必要になってくるかもしれません。

■DXとは?
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、
顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、
業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること

■DXの実態
・DXに着手している企業:57.3%
・DX推進の目的
「デジタル技術の活用による業務プロセスの効率化・生産性向上」
非常に重視している:34.8%
重視している:46.9%と、

「顧客や社会のデジタル化に対応した抜本的な事業構造の変革」
「非常に重視している」:21.0%
「重視している」:36.7%

■テレワークで顕在化した課題
・コミュニケーションが取りにくくなっている
・社員のエンゲージメントの低下
・創造性の低下

■セレンディピティとは
求められていない、意図的でない、思いもよらない、幸運な偶発的に起こった出来事や経験。