顧客獲得マップ(流入チャネル)の重要性とは?|新規顧客獲得戦略のヒント

皆さんの会社は、自社の顧客がどのような経緯で顧客になったかをしっかりと把握されていますか?

顧客獲得のきっかけは紹介、セミナー、展示会、web広告、電話/web問い合わせ、サービスへのトライアル申し込み、など様々でしょう。

実はこれらの流入チャネルや受注までの経路である顧客獲得マップを作ることが再現性のある営業活動をするための第一歩となるのです。新規の顧客獲得戦略を考える上でも非常に役に立ちます。
今回は流入チャネル・顧客獲得マップの重要性について紹介していきます。

顧客獲得マップを知る重要性

受注に至ったチャネルをなんとなく把握されている会社は多いようですが、これを「数値化」したり「可視化」して把握されている会社は少ないように感じます。
なぜならば、相当細かく手の掛かる仕事だからです。だからこそこの整理が営業戦略を立てるうえで非常に重要です。

例えば、営業担当Xさんの売上を見てみます。

■既存客への深耕営業がメインの場合
売上:1200万円
(内訳)
A社600万
B社300万
C社200万
D社100万

これだけ見るとなんとなく「A社からの売上が多い。よし、次年度もA社を攻めよう!」

と思うかもしれません。

ここまでは通常おこなっている整理だと思います。更に顧客流入元を分解して見ることで新しい発見があります。

顧客獲得までの経路(チャネル)を深堀する

自社の顧客の流入経路を知るということは、例えばこんなことです。A社という顧客は、2年前に社長が受注した仕事でした。
しかし、元々、社長はどこからその仕事を受注してきたのか?それを追跡して把握していかなければいけません。

よくよく調べてみると、じつは、既存顧客のB社からの紹介であったことが分かりました。別案件のC社は、1年前に営業部長が受注した仕事でした。C社の流入経路を調べると実は、これもB社からの紹介だったことが分かりました。

そしてD社は新規アタックリストからテレアポで獲得した新規顧客でした。

一見、社長が取ってきた仕事、部長が受注してきた仕事、と分けがちですが、どこから紹介を受けたのかを掘り下げることによって、

「B社からの更なる紹介を促す」という戦術に落とし込むことが出来ます。流入経路は、様々です。

あらてめて整理すると
売上:1200万円
(内訳)
A社600万(顧客流入チャネル:B社の紹介)
B社300万(顧客流入チャネル:セミナー)
C社200万(顧客流入チャネル:B社の紹介)
D社100万(顧客流入チャネル:テレアポ)

今回の例だと紹介に頼っていることが明確なので新規案件を受注していくためには流入チャネルを増やす必要もあるでしょう。

例えばインバウンドの流入を増やすには、
・web広告
・オウンドメディア
・ホワイトペーパー
・展示会出展
・外部媒体への掲載

などの新しい施策を実行する必要があるでしょう。更に掘り起こしの強化ならばMA(マーケティングオートメーション)を用いたリードナーチャリング等を実行する必要があります。アウトバウンドを増やす場合は、テレアポの強化やフォームマーケティングが考えられるでしょう。

1社ずつ流入経路を分類しましょう

1社ずつ、売上金額や粗利金額と共に、社員の人脈による紹介(友人、過去の仕事関係)、web広告、セミナー、代理店、アウトバウンド営業、などに分類します。すると自社の顧客がどこから発生しているかを一目でみることが出来るのです。

把握することによって、どこに力を入れるべきなのか、他の流入経路は強化できないか?
などを考える土台になるのです。

もう一度Xさんの売上を整理してみましょう。
売上:1200万円
(内訳)
A社600万(B社の紹介)
B社300万(既存顧客:元はセミナー)
C社200万(B社の紹介)
D社100万(新規:テレアポリストからのコールドコール)

更に、それぞれの売上を上げるのに使った工数を計算することで、費用対効果も測定することができ、より詳細な営業戦略を練ることもできます。

顧客流入チャネル毎の受注件数や費用対効果の測定やSFA/CRMを活用すると良いでしょう。

参考コラム:
営業ツールを用いて売上向上させるために注意すべき点
パイプラインマネジメントで解決!営業の売上予測の精度を高める方法
セールスイネーブルメントの取り組みを加速するSFA/CRM活用方法

現状だとまだまだ紹介の比率が高いので、新しい施策を実行して新たな顧客流入チャネルを構築していくことが必要だということがわかります。
この顧客流入チャネルを活用した新規獲得戦略の立案例をお伝えします。

顧客流入チャネルを参考に新規獲得戦略を立案する

顧客流入チャネルごとの売上とコストも合わせて整理することで次年度以降の新規獲得戦略が見えてきます。
(例)
■流入経路の例
・紹介:500万円(コスト:0円)
・web広告:500万円(コスト:300万円)
・オウンドメディア:100万円(コスト:50万円)
・テレアポ:500万円(コスト:100万円)
・セミナー:0万円(コスト:10万円)
・展示会:400万円(コスト:150万円)
・電話/web問合せ:150万円(コスト:0)

ほぼ満遍なく様々なチャネルから顧客は獲得できていますが、セミナーからの受注がないことがわかります。セミナーの開催を控えるかターゲットやテーマを見直す必要があるでしょう。またweb広告からの受注は高いので広告予算を次年度は増やしても良いでしょう。展示会は出展コストがかかりますが、受注金額が大きいので積極的に参加することで次年度は更に受注額を伸ばせるかもしれません。

このように新規の獲得戦略を考える上で顧客流入チャネルの整理は欠かせません。

忘れてはいけないLTVという視点

顧客流入経路を整理することで、新規顧客の獲得をするための方向性が見えたかと思います。しかし忘れてはいけないのがLTV(顧客生涯価値)です。新規開拓はもちろん必要ですが、受注した顧客がリピートしてくれると尚良いでしょう。

顧客生涯価値(LTV)とは、
企業と顧客が継続的に取引をすることで顧客が企業にもたらす価値(利益)の総計のこと。Lifetime Value(ライフタイムバリュー、LTV)とも呼ばれます。

計算式で書くと、
LTV = 平均購買単価 x 購買頻度 x 継続購買期間
となります。

参考記事:顧客生涯価値(LTV)をアップさせる営業の仕組みとは?

<例>顧客A(流入チャネル:セミナー)
・年間で100万円の購買
・年1回の発注
・利用年数が10年

とすると、

LTV = 100(万円) × 1(回) × 10(年) = 1,000(万円)

このサービスにおける顧客生涯価値は500万円となります。
(実際には継続して頂くための営業コストや初期獲得のためのコストや、サービス内容により様々なコストを考慮する必要がある)

<例2>顧客B(流入チャネル:テレアポ)
・年間で500万円の購買
・年1回の発注
・利用年数が1年(一度の取引のみ)

LTV = 500(万円) × 1(回) × 1(年) = 500(万円)

このように中長期的に見ると強化すべき顧客流入チャネルは「テレアポ」ではなく「セミナー」になります。新規獲得できる流入チャネルを全体的に強化しつつ、LTVが一番高いチャネルも抑えておきましょう。

まとめ

受注までの流入経路など顧客獲得マップを作ることで今後の営業戦略やマーケティング戦略が見えてきます。

■流入経路の例
・紹介
・web広告
・オウンドメディア
・ホワイトペーパー
・テレアポ
・セミナー
・展示会
・電話/web問合せ

■注意点
・LTVも見てみる
・コストも計測して効率性を見極める

・一つの流入経路に偏るのは危険
・複数のチャネルを持つことが重要
・ない場合は新施策として重点的に強化する

「顧客獲得マップ」を作成することで実に色々な事が分かり、その後、新規の開拓予算設定やパワー配分など営業戦略の大きな参考となります。